――――――2話――――――「不登校」―――――― もうすぐ4限目が始まろうという時。 私は体を起して、ロッカーに入ってる理科の教科書を取りに席を立つ。 ロッカーを漁っていると、教室がざわめき始めた。 何事かと、そちらを見てみると、岡雪 美月が立っていた。 カバンを持って、制服を着、教室の入り口で固まっていた。 「岡雪・・・・・・」 「今更何しに来たんだよ〜〜」 ざわめきが、貶し声に変わった。 みんなは散り散りになって席へ戻って行った。 岡雪美月は、1年の頃から不登校になっていた、女生徒。 いじめられていたらしい。 「あ......あの、、」 私は、虐めとかハブは嫌い。 誰とでも広くて浅い関係を築いてきた。 いま、岡雪美月の席は、私の隣。 私は教科書を持って、自分の席に座ると、岡雪美月に声をかける。 「席。 私の隣だから」 冷たく言うつもりはなかったのだけど、そう取られたらしい。 岡雪美月は、ビクリとして、私の隣に来た。 「あ...あの」 何でこんなにビクビクするのかな? 自分のクラスなんだから堂々としてればいいのに。 久しぶりだからって、遠慮とか、恥とか持たなくていいのに。 「よろしくっ」 精一杯、優しく、元気に言ったつもりだったんだろう。 でも、その声は、恐怖と苦しみに震えていた。 「よろしく」 明るく返して、言葉は詰まった。 話題がない。 何を話せばいいのか、わからないのだろう。 岡雪美月も、戸惑っていた。 ちょうどいい感じで、理科の松本先生が入ってくる。 「あ・・・教科書....」 「忘れたの? 」 彼女の机の上には、鞄だけ。 何か入っているのかは、聞くまでもないだろう。 「私の、みなよ」 そう言って机を寄せ、教科書を開いて見せると、彼女は嬉しそうに笑った。 「ありがとう」 はにかんだ岡雪美月からは、暗い雰囲気など持っていなかった。