第一幕 Encounter

 第5話 知れ渡る名

 

 シャスは森の中を歩いていた。

「クレナイ、この近くに村はあるの」

 シャスがクレナイに訊く、

『ああ、小さいが、村はある、日が暮れてきたからその村の宿に止まろう。まっすぐ先にある』

「分かった」

 シャスはクレナイに言われたとおり、まっすぐ進んでいった。

 

 しばらくして、森の出口とともに、家々が見えてきた。

 村に着いたとき、もうあたりは真っ暗だった。

「宿はどこにあるの」

 シャスは、村の家々を見渡しながら、言った。

『左側の、5番目の家だ、明かりはまだついている』

 シャスは、クレナイのいったとおりの場所に、普通の家と間違いそうなほど、ちっぽけな宿を見つけた。

 

 そっとドアを開ける、カラン、と、ドアチャイムが鳴る。

 それと同時に、テーブルの椅子に座っていた、主人らしい男性が、驚いてこちらを向いた。どうやら、あまり客は来ないようだ。

 そして、こう訊いてきた。

「旅のお方ですか」

「はい」

 シャスは質問に即答した。

「……私は、この宿の主人です。でも、旅のお方を、こんな危険な村に泊めるわけには行きません。 私がお送りしますので、どうか他の村の宿に泊まったほうがよろしいと……」

 主人は必死に、この宿に泊まることをよしたほうが良い、と言った。

「なぜなんですか、どう危険なんですか」

 シャスは主人に言った。

 主人はしばらく口ごもり、こう言った。

「この村には、盗賊が来るんです、いつ来るか分かりません。よそのお方を巻き込むわけにはいかないのです……」

『シャス、代われ』

 いきなり、クレナイがシャスに言った。

「え、うん。わかった」

 シャスは、目を閉じ、深呼吸をした。その時、すでに二人の立場は変わっていた。

 クレナイが、主人に言った。

「その盗賊が、二度とこの村に来れないようにして差し上げましょうか」

 主人が、驚いて顔を上げた。

「つまり……あの世いきにする、という意味ですか……」

 しかし、クレナイは首を振った。

「違います、その盗賊等に、一生で一番の恐怖を実感させるのです」

「え、今なんと……」

 主人は驚いて聞き返したが、クレナイはまた、繰り返した。

「一生で一番の恐怖を」

 そう言ったクレナイ……否、シャスの顔には、怪しい笑みが浮かんでいた。

 

 

 

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第五話完成~☆

次回は・・・・・・お楽しみに☆

いや、決して思いついてないわけではありませんよ?ただ単に言ってみただけです(ォィ

では、次回をお楽しみに~(逃(待