第3幕 remembrance  第19話 天界 強く思ったなら、いち早く。 弱く思ったなら、実行はしない。 霊の気まぐれ。 自分自身の魂は、制御しなければいけない。 出来なければ、永遠に苦しむことになる。  シャスはしばらく動けなかった。  今ここで何が起きているのか、全くわからなかったからだ。  少女はシャスを指差したまま、じっと見つめている。  二人の少女は双子らしく、どこも似ていた。一つ、違う点があった。  一人の少女は瞳が青く、もう一人は瞳が赤かった。シャスを指差しているのは青い瞳の少女だ。 『あなた、天界に来たいと思ったでしょ』  赤い瞳の少女が言った。 「あ……」  シャスは、自分が天界に行ってみたいと考えていたことを思い出した。 『そうよね、だからここにいるのよね』  赤い瞳の少女が強く言った。 『一応言っておくわ。私はエナ』  赤い瞳の少女が言った。 『私は……、リナ』  青い瞳の少女が不安げに言った。そして指をおろした。  シャスは、今の状況は理解できなかったが、二人の名前を覚えることは出来た。 『なぜ、ここに来れたかわかる』  赤い瞳の少女、エナが言った。  シャスは首を横に振った。 『それはね、あなたの……、魂が実行したからよ』  青い瞳の少女が呟くように言った。 『リナ、無理して話さなくってもいいわ。私が話すから』  エナがリナに、囁くように言った。  エナは真剣な目つきで話し始めた。 『霊は人の心をよむの、体の中にいる間は、考えていることがわかるのよ。そして、自分の命、魂も霊 よ、その霊があなたの強い気持ちを受けて、実行したのよ、あなたが霊体になった隙に』 「ということは……」  シャスが冷や汗を流していった。実際には流れていなかったが、もし体があれば、流していただろう。  そしてエナがゆっくりと頷いた。 『そう、ここが天界よ』  エナは立ち上がり、両手を広げた。  大きな湖、生い茂る木、枯れかけた草花。寂しい光景だった。後は何も見えない。 『死んだ霊は、がっかりして、天界を抜け出そうとするわ、でも、普通の人は出られない。出られるの  は、全世界にに2人しか居ない』  リナが言った。 『神と呼ばれる霊だけです』  シャスは目を丸くした。2人しかいない……。ということは、クレナイとソウだけということになる。 「僕は出られるの……」  シャスがやっと口を開き、訊いた。  エナが言った。 『平気よ。あなたはその2人に好かれている、特別な存在なのよ。それに、生きているならなおさら早く 出て行ってもらわなきゃいけないわ』  シャスはそれを聞いてほっと、胸を撫で下ろした。 『それじゃあね、シャス』 『ス……シャス……シャスッ』  強く呼ぶ声が頭の中に響く。 「クレナイ……」  シャスはゆっくりと体を起こした。  木漏れ日の森の中、そこは先ほどの場所とは違った。  シャスは安心して、ため息をついた。 『どこに行ったのかと思ったら、急に帰って気やがって。どこ行ってたんだ』  クレナイが少し怒ったように言った。 「わからない」  シャスはそう呟いた。もし天界だといったら、クレナイはどんな反応をしただろうか。  日が少し傾いている。それほど長い時間天界にいたのだろう。 「心配かけてごめん」  シャスはそっと微笑んだ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 第19話完成! 第18話にコメントがないのに書きました。気にしないほうなんでw ちなみに、霊体は、体の中にいる状態で、幽体は、体から離れている状態のことを言います。オリジナルなんですが(汗 う〜ん……。章の終わりにこの話もって来ればよかった……。最初のネタなくなってきた・・・・・・。 まあ、またアイデア浮かぶでしょ。 ということで、これからもよろしくお願いします。 では。